自由度の高いICT環境でアクティブ・ラーニングを生みだす
■そもそもなぜ整備するのか□
次期学習指導要領では、中教審諮問に「アクティブ・ラーニング」というキーワードが示された。アクティブ・ラーニングとは、言い換えると、「主体的・能動的な学び」のことである。
この実現が今後一層求められるようだ。その学びを支えるためのツールとして期待されるものがタブレット端末である。
子どもが主体的・能動的に取り組む授業で大切なポイントは3つである。第1に、課題解決のために自ら情報を集めることである。第2に、集めた情報を自ら整理・分析することである。第3に、分析した情報を使って自らまとめたり、伝えたりすることである。
タブレット端末を与え、それをうまく使う能力である情報リテラシーを高めることで、これらのことがうまくできるようになる。
□アクティブ・ラーニングの具体的な事例■
【総合的な学習「街の魅力を発信しよう」】
昨年行った総合的な学習の事例で、タブレット端末があることでどのようなアクティブ・ラーニングの姿が生み出されたかを紹介する。
過疎化した街を活性化するために、街の魅力を発見し、それを自らまとめて作成したYouTube動画で発信することで観光客を集めようという単元である。
まず、子どもは、街に出向いて、街のものや人に触れながら、魅力探しに取り組む。その際、タブレット端末を用いて、写真やインタビュー映像というかたちで情報を集める。
次に行うことは、自ら集めた大量の情報を友達と一緒に整理・分析することだ。魅力を伝える動画に表すために、どの写真が一番適切かを考えるのである。
タブレット端末であれば、PC室に行かずとも、教室でできる。デジタルカメラではないので、画面も大きく、お互いに見せ合いながら検討できる。データもSDカードなどを使わなくてもやり取りできる。
使う写真や動画がある程度決まったら、それらを使って友達と協力しながらYouTube動画にまとめる。まとめる際には、著作権や人権の専門家をゲストティーチャーに招き、作品がネット配信する上で妥当なものになっているかを検証して発信する。
このような、一連の協働的で探究的な学習を通して、子どもは、主体的・能動的に「街への思いを深める」という学習をしながら、汎用的な能力である問題解決能力や情報リテラシーを高めていく。
□アクティブラーニングを生むために大切なただ一つの要件とは■
ICT環境整備に唯一絶対の解はない。予算や、育成したい学力や能力によっても導入の仕方は違う。小学校・中学校・高等学校といった発達段階によっても変わってくるのは当然である。
共通する最も大切なたった一つの要件は、「自由度の高さ」である。主体的・能動的を支える道具は、どれだけ使いやすかが大切だからだ。
タブレット端末がPC室に固定されたデスクトップPCに比べてもつ優位性は、自由度にある。どんなに優れたPCでも、PC室でしか使えないのでは、その教室の中でしか情報を収集できない。つまりネット上の情報しか収集できない。
上記の総合的な学習の例で示したような、街に出て自ら情報を集めるには、別途ビデオカメラ機能を有するデジタルカメラをもって街に行き、それをPC室のPCにつないで情報を見ることとなる。
グループで協働的に学習活動をする場合、4人が撮った画像データを見比べてどの写真が適切か判断する活動においては、場所が固定されているデスクトップPCやディスプレーの小さなデジタルカメラでは非常に難しいし、自由度が低い。
まとめをする場面でも、タブレット端末に最適化されたプレゼンテーションアプリを用いることが有効だ。子どもは直感的にプレゼンを作成することができる。
■アクティブな発表活動を支える□
プレゼンテーション場面についても同様のことが言える。情報をまとめたものを伝え合う場合には、本発表の前にグループメンバーやグループ間で検討し合う相互評価活動を行う。
その際も、タブレット端末であれば、同時並行的に気軽に発表をしあうことができる。場所が固定されないので、それぞれ自由に端末を持ち寄り交流しながら複数回プレゼン練習ができる。
このような身体的自由度は、実践する環境では実に重要である。
単に子どもが生き生きしていることがアクティブ・ラーニングではない。大切なことは、道具が子どもの活動を制約せず、子どもの学びを能動的・主体的にしていくことができるかである。
それは、単にタブレット端末という自由度の高い道具を子どもに手渡せばできるということではない。それを効果的に活用する道具的能力である。
情報リテラシーを育成するという視点をもちろん忘れてはならない。
提供元:株式会社教育新聞社の記事へ